マトゥーリな建築家
パオロ・ナーバ(Paolo Nava)さん
1943年生まれ、64歳。世界的なデザイナー、建築家。
ミラノ工科大学建築家卒業。
1972年アントニオ・チッテリオとデザインスタジオ設立。1982年独立。
パオロ・ナーバデザインスタジオ設立。1991年金のコンパス賞受賞。
BB社、フレックスフォルム社などの家具デザインを中心に活躍している。
【プロフィール】
工業で有名なミラノ県ブリアンツァ出身。
お爺様が家具の設計を生業とされていたため、小さな頃から木の香りに包まれ、職人達によって形作られて行く家具を見ながら育ったそうです。
当時はまだあまり普及していなかったデザイン学を学ぶために、始めフィレンツェの学校に通い、後にミラノ工科大学にて建築を修めました。
戦前のブリアンツァは貧しい地域でしたが、戦後の工業の回復から現在はとても豊かなイタリアの工業デザインの中心地となっています。ナーバさんのスタジオ兼工房もそんなブリアンツァの閑静な住宅街にあります。
【世界を翔る建築家】
現在のお仕事の中心は、デザインの調査研究と若手の教育。日本、メキシコ、ロシア、タイ、アメリカなど、世界中の国々で講演会を開かれています。
また、今まで日本人を含む様々な国の留学生の研修も受け入れていらっしゃいます。
お庭には模型や彫刻を作るための工房があります。戸倉もここで修業を積みました。
![]() 工房 |
![]() 木を焼く釜 |
【自然を愛すること】
自然を愛し、花を愛し、庭造りに励むことを日課にされています。
自然ほど完成された美は他になく、自然に触れることは最も知的なリラックス効果として反映されると、科学者としての視点からも実感されています。
白いバラが綺麗に植えられたナーバさんのお庭には、あちこちに木の彫刻が。
彫刻はデザインを模索するプロセスの一環であり、手を加えて変化してゆく木からは無限の芸術性を常に発見するそうです。
例えば、同じ種類の木でも木目の模様は全て違う。火で炙ると、二つと同じ濃淡と形の焦げ目は出来ない。それらの木片を庭において置くと、苔や茸が生えてきて、人工的な造形と自然が新たな姿を形作ります。
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![]() 焦げ目もアートに) |
【教育とフィロソフィー】
アート、音楽、デザインなど、多くのものが調和した真理を実現させて行きたい。
全ての子供は元々とても感受性豊かでクリエイティブであり、良く食べ、良く遊びながら五感で全ての物事を感じ取っていくものである。
けれども、現代の教育は『これをやりなさい』と、子供に固定観念を植え付けている。本来、人間はわずかな年月で変化してゆくものなのに、同じ事を何年も繰り返させ、お手本通りに『コピー』させるという教育が主流になっているので、学校とは実は子供達の脳やビジョンを閉じさせる存在になっているのではないか。
子供達は常に能力を開花させてくれる存在を必要としています。特に芸術教育で大切なことは『ものを見ること』。
本当の教育とは良い成績をとる事ではなく、沢山の時間をかけてものを見させ、知覚させ、発想させることである。
時々、経験が思考の邪魔をすることがありますが、好奇心を持って物事を見ることは、知性的視野を開きオリジナリティーを生むとのことです。
ナーバさんのスタジオには実際に見れば見るほど面白い発見が沢山あります。
窓や暖炉は三角形。三角形の隙間から見える光の動きは面白いのだそう。
また階段沿いの壁に大理石の四角い板がはめ込まれているように見えますよね?実はこの大理石は描いたもの。トロンプロイユといって18世紀頃、貴族の間で流行っただまし絵なのです。
![]() 暖炉 |
![]() 階段と大理石模様の絵 |
【これからの夢】
ナーバさんの教育にかける思いは大変なもの。
世界中から好奇心の強い若者を集めてグループを作りたいそうです。全ての人が違う文化の、違う視点を持っているので、対面したときに新たな価値観や物の見方が生まれるそう。
そうすることで、常に時代に合った様々な新しいアイデアを生み出していくことが出来ます。
![]() ナーバさんのデザイン家具 |
![]() 最近の作品、木の彫刻 |
【編集後記】
気さくでエレガントなナーバさん。ご自宅兼スタジオは18世紀に建てられたヴィラで緑あふれる環境です。そこにナーバさんの作品や椅子や照明がポツポツと点在し、居心地の良い空間になっています。お庭からは木や花の良い香りが漂ってきて、クリエイティブな感覚が刺激されます。ナーバさんのような魅力的な方の元で学べば、その後の人生を広い視野を持ってドラマティックに歩んでいけるのではないかと思いました。
取材後のお土産にお庭に咲いているマルゲリータとスミレを一輪ずつ頂きました。
デザインを切り口に人々の国際交流活動に励んでいるナーバさん。私たちドムスデザインもこれからもお力になって行きたいと思います。













